*PBMを遊ぶ人のゲームメモ。架空世界の話メイン。
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Private Reaction-7
2006-10-17 Tue 07:01
 プラリアです。また書いちゃった……てへ(てへ言うな)。
 書き始めた時に書き上げてしまわないと忘れてしまう鳥頭なので、思いついたら吉日のノリでガンガン書いてます(苦笑)。

 少し前に完成させていたのですが、弄りたくて弄れなくて、まあそのまま公開。という流れに。

 このブログでは7本目、パス付きの宵闇ブログも合わせると9本目。7、8本目はBLに特化してるので、別に分けたのですが、見る方に問題が無ければお見せしますので、お気軽にお尋ね下さい。パスお知らせしますので。

 時間列で行くと、ゲーム開始前の話です。ずっと暖めていたネタだったり。むつの設定は、他PLさんに協力を頂いています(多謝)。
 宜しければ、続き( ...READ MORE?)からどうぞ。
第1ターンプライベートリアクション
No.A0137*9     担当:Sie

「鈴の音のように」

(このリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の一部に送られています)

■プラリアを読む

―――――――――――――――――――――――
 手まり歌が聞こえる。

 てんてんと、柔らかなボールが地面に当たってはじける音。
 こどもの笑い声。
 葬儀の場にあって、しかし、生命はどこでもはじける。夏の終わり。蝉の声。駆けていく、夏休みのこどもたち。そこで、弔われているのは、彼の母。
 腕密月(かいな・みつづき)は縁側に座り込み、たまりかねたように、詰襟の留め金を外した。
 彼にそうさせたのは、暑さ、ではない。
 息苦しさ、だ。

「おにいちゃん」

 足音に振り向くと、黒髪の少女。
「睦月、か」
「うん」
 うなづく少女を覆う鎧――セーラー服は、夏の白さを保ちながら、申し合わせたようにべったりとした黒で、この日のためにあつらえたかのようだった。思わず目を逸らし、我知らず、ため息を漏らす。
 むつき、と呼ばれた少女は、心配そうに彼を見下ろす。
「それ、八十神の制服?」
 こくり。
 問われて、密月が頷く。
「お母さんのたんすにも、似たような制服、あったよ」
 ……こくり。

「お葬式が終わったら、すぐ、……戻るの? 八十神に」
「ああ。『帰る』」

 三度目のうなづきを返し、密月は答える。
 その回答に、睦月は不満そうに唇を尖らせた。
「『帰る』なんて言わないで。ここはおにいちゃんのうちなんだから」

 ――帰る場所は、ここだけにして。

 睦月の声は、密月には届かない。
 否とも是とも言わず、唇の形だけで笑う兄を、彼女とは違う、金の髪と、碧の瞳を持った少年を。納得の行かない顔で、睦月は見上げた。
 引き結んだ唇と、黒い瞳は凛として、少女らしい光をたたえて、夏の日に光っている。

 彼らは、お互いの性質をよく理解しあっていた。

 お互いの強情さをよく理解した上で、それでもなおかつ、食い下がるのが睦月で、さらりと交わすのが密月だ。
「……わたしも行っちゃ、だめ?」
「だめ」
「どうしても、だめ?」
「だめです」
 にべも無い。
 睦月はしゃがみこみ、密月の袖をつかんで、顔を覗き込む。

「お父さんなら大丈夫だよ、お兄ちゃんも居るんだし、ひとりじゃないもん。ふたりだもん。それにもう大人だもん。大丈夫だもん。出してくれるって言ったもん」

 まるでだだっこだ。
「だめ」
 密月はきっぱりと言う。
「嘘ついたらアカンえ、睦月。お父はんがむつを一人で出したい訳が無いやろ。お父はんの血ィ継いでるんはむつだけなんやから、傍に居てやり」
 厳しく、しかし優しく、諭すように密月は言う。
 夏の日はゆっくりと終わりと継げようとしていた。
「うう」
 ぺたん、としゃがみ込んで。
「だって、お母さんが居なくなっちゃったら、ますます帰ってこなくなるでしょう? 寂しいよ。輪契者は、わたしとお兄ちゃんだけなのに。お父さんはお父さんだけど、おにいちゃんはお兄ちゃんだもん。たった二人の兄妹じゃない。お父さんだって、……言わないけど、言わないけど心配してるのよ。気持ち、押し付けたいわけじゃないけど」
 べそをかきそうな睦月の声を聞いて。
「寂しいよ」
 その頭を。
 撫でてやりたい誘惑をこらえて、密月は。

「むつ。それは――何です?」

 妹の手に握られた、古びた和紙を指した。
 僅かのふくらみを包んだらしいそれは、年月に焼けて、かすかに変色している。

「……うん」

 お母さんの、と、ぽそぽそ告げ、両の手でそれを包んで差し出す睦月は、所在なげだ。

「お母はんの?」
「お兄ちゃんに、って、お父さんが。寝室で見つけたんだって」

 見上げる両の目は、少し潤んでいる。
 故人の、もの。
 あの、奔放な輪契者の、何がここに残されているのだろう。
 密月は、自分の父親の顔を知らない。母の、最初の夫がなんと言う名前なのかも、知らない。新婚旅行中に自分が宿り、そのために彼らが別れたことは知っている。自分の目が碧く、色素が薄いのもそのためだ、と、子供のころから知っていた。
 彼女が再婚し、睦月が生まれて。
 兄としての役割を得てから。
 自分に出来ることは、なるべく、なるべく。
 父や妹の邪魔にならぬことだと、そう思って。

「……お父はんが?」
 こくり、と頷く睦月から、包みを受け取る。
 和紙はあくまで包みのように思えたが――広げたそこには、何か文字が書いてある。

 一九八八年、八月八日。
 命名、密月。

 包まれていたのは、赤いお守り。
 朱色は、月日がそうしたのだろう。やはり少し剥げている。
 大切に大切に、何度も撫でられたように、そう、なっていた。

「……これ、うちに?」

 睦月が頷く。
 なんと言っていいのか、密月にはよく分からなかった。繰り返す輪廻の中で、女性として生を受けたことは、ある。あるが、その運命の中で、出産に至ったことは、まだなかった。
 愛しい男がいて、子供を授かりたいと思ったことは、ある。
 あるが――それは叶わなかった。
 叶う前に、毒を呷って死んだから。叶わない、けれど『願い』だった。

 想いが重なる。
 母も『そう』だったのだろうか。

 自分を産めたことを、彼女が。もし。
 僅かでも、幸福だと思ってくれたのならば。
 望んで、願って、自分の『母』になってくれたのならば。
 ――それは。

 見ると、睦月が泣いている。
 慌ててポケットからハンカチを探し、白いそれを彼女に渡そうとして、少し戸惑う。と、睦月が右手を差し出して。その手に、可愛らしいハンカチがあって。
 困ったように小首をかしげ、差し出されたそれが。
 自分の頬に伝う涙をぬぐうために、睦月が差し出してくれたのだと、自分が泣いているのだと気づくまでに、視界はすっかり滲んで解けしまい、密月はうろたえる。

 寂しくはあるが、悲しくは無い。
 彼女が、母が、この先どういう輪廻を巡るのか、また巡らないのか、密月には分からない。分からないから、それを喜ぶことは出来ない。もし、この先彼女に出会うことがあったとしても、自分の母親としての彼女に出会うことは、――出来ないのだ。
 それは悲しいことではないはずなのに、なぜだか涙が出た。

「……おおきに。睦月」

 ピンクのハンカチには兎の刺繍があって、それは睦月にはよく似合った。
 受け取ると、彼女は微笑むことで答える。
 軽く広げて、涙を抑え、すん、と鼻をすすって。泣いたのは久しぶりだなんてことを考えて。

「これ、うちが持っててええんかなぁ」
 ぽそりと呟くと。
「お兄ちゃんの、だよ」
 睦月が、笑う。
「そやね」
 密月も、笑った。

 夏の日向はじわりと暑く、それは永遠に続くように思われたけれど、焼け付く太陽は、しかしゆっくりと地平を降りていく。
 広がる稲田はあとひと月ふた月で、秋の実りを迎えるのだろう。

 夏の終わり。秋の始まり。
 巡る季節は、しかし一度しかない。

 どこかでリンと、風鈴が鳴った。

―――――――――――――――――――――――
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