*PBMを遊ぶ人のゲームメモ。架空世界の話メイン。
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I will always be grateful for it.
2007-05-17 Thu 20:35
 先日、8001&8888番目のご来訪記念に、弥生樹くんと密月を書いたのですけれども(こちらのエントリ)、お礼のお礼を頂いてしまいました……(!!!)。
 樹くんPLの九条雪人さまから、素敵なプラリアを頂戴しました。
 密月が新潟出身で、樹くんが各地を転校してらした、という話から、同じ小学校に居たかも知れないね、なんて話にはなっていたのですが、ああ、もう、何を語っても嬉しさが止まりません……!
 九条さんからご許可頂いたので、続きにプラリア本文と、沢山の感謝を。
 樹くん視点の、密月との、優しいお話です。萌えて死にそう。(黙れ)
***
 
 
 
 しとしとと窓の外に降り注ぐ雨は、強すぎず、弱すぎず、耳に心地よい。
 先ほどまでの大雨は、今は小雨がぱらつく程度に収まり、部屋の中を静かな雨音だけが支配していた。
 暗闇の中、弥生樹(やよい・いつき)は、隣りに眠る青年へと目を凝らす。
 柔らかな蜂蜜色の髪の下に、その人――腕密月(かいな・みつづき)の寝顔があった。
 その寝顔をぼんやりと眺めながら思う。……この人は、こんなにも儚げだったろうか、と。
 幼い頃の自分の目に映るこの人は、ただ、優しくて、大きくて。
 憧れたきっかけは、自分の京都訛りを笑わずに聞いてくれた初めての人だったから、とか、そんな理由だったように思う。
 学校の帰り道、消雪パイプで半解けになった雪に滑って転んで泣き出したところを、優しく宥めてもらったことがあった。
 あんまり上手に作れなかったお団子を、美味しそうに食べてもらったことがあった。
 遊んでいる最中に、不意に寝こけてしまった自分が目覚めるまで、ずっとそばに居てもらったことがあった。
 何度も助けてもらった。何度も包んでもらった。
 けれども当時の自分は、ただ与えてもらうばかりで。
「んっ……」
 密月さんの口から、苦しげな声が漏れた。額に、ぽつぽつと玉のような汗が浮かんでいる。悪い夢でも見ているのだろうか。
 彼を起こしてしまわないよう、そっと身を起こし、水道の水でタオルを絞り、持ってくる。
 彼の横に膝をつき、タオルの先でそっと、額の汗を拭いた。
 触れれば折れてしまいそうな、密月さんのたおやかで白い首筋が目に映る。
 その上にそっとタオルを滑らせながら、思う。
 自分は、この人のために、何か少しでも役に立つことができていたのだろうか……と。
 傲慢であるとは、思う。あの頃の自分は、人のために何かをするには、あまりにも幼すぎた。むしろ、迷惑のかけ通しであったように思う。
 けれども、何かに傷ついているこの人の、その傷にさえ気づけなかった自分が、ただ、悔しくて、悲しくて。
 だから。
 いつの日だったか、眠れなかった夜。優しくそうしてもらったように。
 額にそっと、唇で触れた。

 どれくらいの間、そうしていただろうか。手にしたタオルはすっかり生暖かくなっていた。
 再び柔らかな寝息を立て始めた密月さんの顔を確認し、音を立てないように、自分の布団へと戻る。
「おやすみ、密月さん」
 呟くように声をかけ、布団に潜る。
 この学院に集まる輪楔者は、ほぼ例外なく、過去に何らかの心の傷を負っている。
 それは自分も例外ではないし、密月さんもおそらく、そうなのであろう。そして、あまねさんも。悪夢にうなされることも、珍しいことではない。
 けれども、そんなことさえ知らなかった幼き日のあの頃――新潟でのあのわずかな、けれども暖かだった記憶は、今も自分の中に大切に残っている。
 雪深き国での、大切な記憶。
 しんしんと降る雪に空がぼんやりと照らされ、見上げると、ふわふわと舞う粉雪が遠くまで目に映る。一つだけぽつんとある電灯の下で、防寒着のフードを目深にかぶり、自分は密にぃを待っていた。
 雪の中で待つのは、嫌いではなかった。外が冷たければその分、ふれあう温もりを暖かく感じることができるから。
 そうして、一時間待ち、二時間待ち……どのくらい待ったであろうか。
 いつの間にか雪はやみ、周りは暗闇で閉ざされ……唯一の明かりは、ぽつんとある電灯の光のみ。
 ……置いて行かれた? 心に、不安がさざ波のように広がり、それが徐々に大きくなっていく。
 どうして? 密にぃがそんなこと……いや、自分が待っていたのは密にぃだっただろうか。
 違う。
 待っていたのは、大切なあの人。
 何日も、何年も、何千年待ってもあの人はもう戻ってこない。
 置いて行かれたから。あのとき、ついて行くことができなかったから。
 待って、待って、待って待って待ちすぎて。もう、どんな姿だったのか、どんな声だったのかさえ思い出せない、大切なあの人。
 自分はあの人を裏切ったからだからもう永遠にあの人は戻ってこない。
 自分にはあの人を待つ資格さえ、ない。
 不意に、ぷつっと電灯の光が消えた。
 そうして、自分と共に世界は永遠の暗闇に閉ざされる。

 気がつくと、そこに光があった。
「目ぇ覚めた?」
 目を上げると、すぐ目の前に、優しく微笑む密月さんの顔があった。朝の柔らかい光が窓から伸びて、密月さんの顔を明るく照らし出している。
 ぼおっと見ていると、密月さんの細い指が自分の目元に触れた。拭うようにこすると、水滴が指に残る。
 ……自分は、泣いていたのだろうか?
 そこで初めて、自分が密月さんに抱きしめられていることに気がつく。密月さんの腕の中は、酷く心地よかった。
「堪忍な。苦しい思いさせてもうて。けど、こうしてへんと樹、ふらふらと何処かへ行ってまうから」
 寝ている間に「囁き」が出たのだろうか。酷い夢を見ていたような気がするけれど、曖昧でよく思い出せない。
「……ううん。苦しいこと、あらへん」
 ふるふると緩く首を振ると、自分が密月さんごと、毛布に包まれているのが目に入る。
 ずっと、夜通しこうしてくれていたのだろうか。
「ボクの方こそ……堪忍……密にぃに、また迷惑かけてもうて……」
 幼い頃の呼び名が、ほろりと口から滑り落ちる。
「迷惑なことなんてあらへん。……こうしてるとな、なんや昔のあの頃に戻うたみたいで。嬉しいんよ」
 見上げると、ふわりと笑う密にぃと目が合った。
「また、『密にぃ』って呼んでくれはったね」
 密にぃの笑顔と、とろけるような暖かさが心地よくて、また眠りに落ちそうになる。落ちる前にと、懸命に言葉を絞り出した。
「密にぃ」
「……ん?」
「あんな。ボク、ずっと……密にぃの役に立ちたいって、恩返ししたいって、思うてたん……」
 くすり、と密にぃが笑う。
「恩返しなら、もうしてもろうてるよ。……樹とまた、こうして再会できたこと。樹がここに居てくれること以上の、恩返しなんてあらへん」
「……ボク、ここに……密にぃの側に居ても、ええの?」
「おかしいこと聞かんといてや」
 つん、と額を指でつつかれる。その仕草さえ心地よくて、再びとろとろと、まどろみが押し寄せてくる。
「まだ、もう少し寝ててええよ。起こしてあげるから……おやすみ、樹」
 額に、柔らかな感触が触れる。それを確かめる間さえなく、意識は再び落ちていく。
 今度こそ、あの頃の優しい夢を見られるような気がした。

<Fin>
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