*PBMを遊ぶ人のゲームメモ。架空世界の話メイン。
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40th
2007-03-30 Fri 14:13
 少し間が開きましたね。
 アクションと一緒に送ったプラリアのうち、一本(雨宮先生と密月がいちゃいちゃしてるだけの)です。
 BLもだいじょうぶよー、という方は続きをどうぞ。
――――――――
No.P×OXX40 担当:Sie
「雨だれのように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
■プラリアを読む

――――――――

 ――愛おしくて、触れた

 さああ……と細かい雨が降っている。
 雨粒は、宵闇館の窓ガラスを伝って流れていった。
 天気予報によれば、明日の昼頃まではこんな調子らしい。
 腕密月(かいな・みつづき)はそっと、窓の外に視線を送る。顧問室から見る雨の風景は、密月にとって見慣れたものになってしまった。
 確か、初めてこの特設校から雨を見たのは――接客室のひとつだったはずだ。
 心細くて、何度も帰ろうかと思った。
 けれど、自分の抱える疑問と不安が、独りで解決できるものではない、ということにも気づいていた。だから、密月は、密月に持てる最大の勇気を出して、一歩を踏み出したのだ。

 不安だった。
 けれど、恐れはなかった。

 何が切っ掛けだったのか、思い出せないわけではない。
 けれどもう、目の前に居るいとおしい人のことで、全てはいっぱいになってしまった。これは、恋だろうか。人を好きになる、ということは、こんなことだったのだろうか。
 喉元に手をやると、そこに、かつて只の一度たりともまともに結ぶことのなかったネクタイが、綺麗に結ばれている。
 密月の想い人――雨宮譲[あまみや・ゆずる]の手によって、そうされたものだ。
 手を置くと、恐れよりも痛みよりも恐怖よりも、愛おしさがこみ上げてくる。
 時計を見ると、随分と時間が過ぎてしまったことが分かった。そんな時間をかけて。自分ひとりの為に。愚にもつかないことを。40分。ネクタイ一本にかける時間ではない。そんな時間を、……自分の為に。
 四十分かけて、譲は密月にネクタイを締めた。

「大丈夫だ。お前は強い。トラウマは強いだろうが、それを乗り越える力がある」

 明滅する信号のように駆け巡った思考は、譲と、譲が添えてくれたネクタイピンに結ばれる。嬉しい。自分には、彼に何が出来るのだろう――そう思い至って、密月は鞄から贈り物を取り出した。何ヶ月もそこに入っていた、かつてはクリスマス・プレゼントの名を持っていたマフラーと。
 友人の手を借りて作り上げたマフラーと。
 密月に、マフラーの暖かさはよく分からない。巻けないのだから。
 けれど、彼の喉元を暖めるのに、柔らかな毛糸は相応しいように思えた。だから。自分が側に居ないときも、彼を暖めるように。

「ありがとう」

 譲の声に、密月は笑った。
 受け取って、くれた。
 認めて、くれた。

 レンズの奥にある瞳はとても優しい光を放っている。だからそれは、密月にとっては笑顔だった。わらって、くれた。それだけで嬉しかった。

 ――愛おしくて、触れた。

 何に怯えていたのだろう。
 譲はいつだって、密月を拒みはしなかったのに。

 愛せないものは愛さない。それは宵闇館の“ルール”だ。何を不安になっていたのだろう。気に入らないものは抱かない。贈り物も、もらって嬉しい相手からしかもらってはいけない、もらったからにはちゃんと礼をする……つまり相手しなければならないと、密月に教えたのは、他でもない譲だと、そこまで考えて、密月はふと、頬が熱くなるのを感じた。
 その話を、すっかり忘れていたことに気づいたのだ。
 見返りを求めたつもりではなかった。
 無かった、けれど――

 密月は見上げる。そこには譲が居る。
 愛おしいという感情は、容易く理性の堰を切ってあふれ出す。感情は唇の端を持ち上げ、視界をぼかすのに十分な力を持っていた。
 だから、密月はゆっくりと目を閉じる。もう一度瞼を持ち上げる。そこに譲が居る。その幸福を噛み締める。
 精一杯の、感謝と――愛を込めて、言葉を紡ぐ。この気持ちが、伝わりますようにと。

「うちこそ……おおきに」

 隣り合わせて座った位置から、少しだけ近づく。雨宮は動かない。けれど拒みもしない。抱いたときも、抱かれたときもそうだった。あるがままを、受け容れてくれた人。
 その唇に、そっと。柔らかく口付ける。
 触れたそれはあたたかで、離れるとほんのりと寂しい。

「センセ」
 密月が、そっと呼ぶ。
「何だ?」
 譲が答える。
 密月の視線が僅かに揺れ、もう一度譲の元へ戻るまで、彼は決して急かしたりはしない。静かに自分を見つめる視線まで戻って、密月が口を開いた。

「……触れても、かめへん……?」

 お預けをくらった仔犬が、くうんと鳴くように、密月が尋ねる。
 譲は肩をすくめ、蜂蜜色の髪に指をからめ、薄く笑う。
「もう、触れているだろう」
「へえ」
「おいで」
 差し出された手。
 そっと掴み、吸い寄せられるように、その膝の上に乗る。恥ずかしそうに俯いた後、密月は、嬉しそうに笑った。
「大丈夫だ」
 ふたりぶんの重さを受け取り、椅子がきしりと悲鳴を上げる。
 密月の背を支えるように左手を回し、譲が口を開いた。右の手で、柔らかく髪を弄んでいる。密月は、されるままに身を任せていた。
「……はい」
 小さく頷いて、頬を摺り寄せてくる密月を、譲が抱き寄せる。蜂蜜の色をした、髪が揺れた。

 自分の強さというものを、密月は測れない。
 何度も負けた。
 信じては裏切られた。
 裏切る人を、一度たりとも救えた試しがない。愛した人に、最後まで寄り添い、平穏な最後を遂げる、それだけのことが、彼の過去生での望みだったのに、それは、ただの一度も叶えられなかった。
 人の中で生きるうち、どこかに生まれた軋轢に挟まれて、ある日突然、灯火が消えるように、死んだ。
 残してきた人を思うと、胸が痛む。
 自分が、もう少し強ければ。
 そう、何度思ったか分からない。けれど。

 譲の唇が、頬に触れた。触れた感触が僅かに湿り気を帯びていて、密月は自分の涙に気づく。
 微笑もうとしてしくじった密月へ、気遣うまなざしが送られる。だから、密月は笑った。大丈夫だと。嬉しいのだと。そう伝えたくて。

「譲はんが」

 嬉しかった。名を呼べる。答えてもらえる。
 嬉しいと、愛おしいと思ったら、何故だか視界が揺らいだ。

「大丈夫言うてくれはったら、うち、どこまでも強うなれる気がします」

 涙が、零れそうになるのを堪える。そんな密月を、譲はあやすように撫でる。
 互いの体温だけが暖かい、その窓の外は、雨。

 雨音のようにやわらかに、口付けが落ちた。
――――――――

■PLより
 第6ターンのリアを受けて。
 こんなほのぼのしてる暇は無いんじゃなかろうかとドキドキしながら書きました。

 前世にも囁きにも、自分で打ち勝たないとだめだよと佐藤正先生が言うので、まずはトラウマを克服だ?! とかいう非常に個人的なアクション――「嫌いなもの」に、「首に巻くもの」がある密月のアレコレ――に、付き合ってくれた雨宮先生への返歌で。

 個人的なことに終始しすぎちゃったなぁというのは反省点なのですが、深く掘り下げてもらったことには、非常に感謝しています。
 アクション前の整理整頓分。でした。
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