*PBMを遊ぶ人のゲームメモ。架空世界の話メイン。
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P.R.-6th
2007-03-18 Sun 03:18
No.P×OXX39 担当:Sie
「永遠のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
■プラリアを読む
――――――――
 ――何が起こったか、よく思い出せない。

 舞い上がっていた。
 力になりたくて、強くなりたくて。
 その日。
 彼の手でなら、どんなおそろしいことをされても大丈夫だと、そう思ったから、ひとつの頼みごとをしたのだ。
 他の誰の手でもだめだ。
 雨宮譲[あまみや・ゆずる]の手でないと駄目だったのだ。
 自分の弱点を晒し、それを治したいと申し出ることから、腕密月(かいな・みつづき)にとっては勇気だった。――初めて出逢った時既に、伝えていた弱みではあったけれど。
 首に何かを、巻くことが出来ない。
 譲の手で、譲のネクタイを巻いてもらうことなら、ひょっとしたら。
 それは本当に、ふとした思い付きだった。
 勢いが無ければそんなこと、頼めはしない。譲にでなければ――

 そう、彼でしか――出来ないことだったから。

 ぐらぐらする頭で密月は思い出す。
 打たれた痛みが残っていたのかも知れない。それ以上に、目の前から奪われたのが、譲であったことに、密月は動転していた。
 知った顔と知らない顔。順に思い出すけれど整理が出来ない。
 草野結城[くさの・ゆうき]が居た。雨宮が『守りたい』と言った、密月自身もそう思っていた、宵闇館の生徒たちが、そこに、居た。
 ただ驚いた。
 油断していたのだ。――密月は歯噛みする。するが仕方ない。巻き戻しようが無い過去だった。
 雨宮との逢瀬に、誰かが立ち入るということは、今まで無かった。無かったとは言え、宵闇に繋がる場所で人殺しがあったと言うのに、自分は何をのん気に。
 例えばあれが、自分の命であったならば。
 こんなに錯乱する必要があっただろうか。恐らくそうではない。確かに、雨宮を残して独り逝くことは、決して避けなければならないと、そう思っていたけれど、それは、雨宮を奪われること以上に、密月へ混乱をもたらしはしなかっただろう。
 しかし、密月から奪われたのは――いのちよりもたいせつなもの。

 駆けた。

 駆けた先、見慣れた顔があった。
 それが誰であるかまで、思考が回らない。ただただひとつのこと、譲の行き先と安否だけを、ぐるぐると回す密月の頭で、何をまともに考えることが出来ただろうか。
 それでも順序だてて、そこへたどり着いたのは、奇跡としか言い様がなかった。
 扉を開けるための力を持ったエメレンツィアの末が、密月に協力してくれたことも含めて。

 駆けて――叫んだ。

「雨宮センセは? 譲はんはどこ行きはったん!」

 誰かのの制服を掴んだ。
 視界がぼやけ、霞んでいく。何かが頬を伝う。こんなときに邪魔だ。
「何があった」
「うちが顧問室におったら、突然結城はんがやってきて、気絶させて連れてってしもうたんや。追いかけよう思うたけど、あの扉、エメレンツィアの末しか開けられへん扉やから……エメレンツィアの末の人に頼んで、開けてもらったんや……」
「あれは、雨宮だったか!」

 ――ぐらりと、視界が揺れる。

 涙でも痛みでもなく、世界が暗転したかのような眩暈。
 実際に殴られたときよりも重く、強く、密月は打たれた。あれは夢ではなかった。確かに、腕密月から、雨宮譲は奪われたのだ。

「雨宮先生を……依代に?」

 誰かが口を開いた。
 言葉の意味が分からない。よりしろ? 何の?
 エメレンツィア――リバース・オブ・エメレンツィアの?
 だとしたら、『それ』に警戒を払わなかった自分はなんと愚鈍なのか。千に千切れても構わない。どんな罰を受けても構わない。むしろ、密月自身が、密月自身を許さないだろう。
 ありとあらゆる感情の波は、一気に密月を襲い、全ての思考を白紙にする。

「分からない……でも、鍵を持って入られたからには、奴の言った通り、二日待たなきゃいけないんだろ」
「センセ……センセ……」
 密月は扉に爪を立てた。しかし扉は動かない。
 ラドルフの豪腕もオルトルートの天眼通も通じない扉に――やわらかな皮膚の延長など、何の意味があっただろう。そこには何の傷もない。それでも爪を立てる。指先に何か抵抗が走る。
 扉の硬さも、神経が感じているはずの痛みも、今の密月には何の意味ももたらさなかった。
 掻き毟る。
 強くひっかくと何かが動いた――けれど、扉は元のままだ。おかしい。何かがはがれてきているのに。何かが傷むのに。
 泣いていた。
 泣きながら爪を立てていた。力加減など出来ない。がりっと、嫌な音がした。

「おい、あんた」
「――腕」
「ちょっ、爪」

 誰かの手が、密月の肩を引く。
 八本の血の跡が扉に残った――爪が剥がれたのだ。

「センセっ……」
「しっかりしろっ」

 肩を振り払おうとした。だってあの先には愛する人が居る。泣いている場合ではない。体の何処より、胸の中心が抉られるように痛んだ。千切れる――

「――密月っ」

 知った声が、辛うじて密月の鼓膜を揺さぶる。けれど、けれど――あのひとの声ではない――尚も扉にすがろうとして抵抗する密月の頬を、誰かの手のひらが弾く。
 ぱちんっ、と、乾いた音が響いた。

「しっかりして下さい、腕さんっ」

 今度こそ、密月の鼓膜に凛とした声が届いた。
 緑の色をした瞳が見開いた。
 新芽のような淡いグリーンは、ぼやりと霞んでいる。悲しみと混乱に彩られているのが、誰の目からも分かった。その焦点がが急速に引き絞られて――今さっき密月をひっぱたいて、きゅっと眉根をひそめたままの、藤倉辰巳(ふじくら・たつみ)にぶつかる。
 辰巳は唇を噛み締め、辛そうに、けれど、しっかりと密月を見ている。

「……」

 辰巳に。桐原灰人(きりはら・かいと)に。室内に居る幾人かの顔に、揺れては結ばれ、徐々に落胆している。
 皆は気づいていた。視線は探している。ただひとりを。

「ふじくら……はん」

 蚊の鳴くような声で、密月がこぼした。
 こぼした、としか言いようがない。ひとりひとりの名を、密月は口の中で呼ぶ。そこに雨宮譲が居ない、ということを、今、密月は、冷え始めた頭で、じわじわと認識しているのだ。
 そうして。
 密月は、笑った。
 震えながら笑った。
 その顔を、笑顔と証することは出来ない。けれど、微笑みの形に、唇は引き結ばれた。そう、唇だけが。
「怪我をしているんです。手当てしないと」
 辰巳が、辛うじて声をかける。
 声はほんの少し不安を含んでいたが、それは密月を案じてのことだったのだろう。何しろ、密月の爪は、赤く染まりながら、半ば折れ、半ば剥がれ、見るも無残な状況だったのだ。
 心配そうに覗き込む顔を見上げて――密月は、唇を開いた。

「……何があったか、教えてくれはりますか。ひとつ残らず。全部」

 声は、ぞくりとするほど静かだった。誰かが息を呑む。誰かが、目を逸らす。誰かが、心配そうに――或いは辛そうに眉を寄せた。
 辰巳は、きゅっと唇を噛む。腹の辺りに力を込め、ぎゅっと言葉を吐く。

「……今は、手当てが先です……」

「……っ……」

 密月は、また、泣いた。

 そうして。

 そうして、扉がふたたび開かれるまでの、長い二日間が幕を開ける。
――――――――

■PLより:
 第6ターンのリアを受けて。
 PCが混乱したまま次回に続いていたので、こちらで補完してみました。手は、想像するだけで痛そうです(ひー)。

 最後のほう、何人か入り乱れてます(苦笑)。
 プラリア出演を快諾下さったPLさんに感謝を。

 修正すべき点がありましたら、ご遠慮なくお申し付け下さいね。有難う御座いました。
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