*PBMを遊ぶ人のゲームメモ。架空世界の話メイン。
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Private Reaction
2007-01-08 Mon 21:10
 久しぶりに密月の――けれど、きちんとした形では始めての「前世」プラリアです。
 snさんの書いてくださったもの(「ぼくぜん」の、こちらのエントリになります)へのお返事、という形なので、そちらから先にご覧下さいませ。

 同じ記憶を持っているPCが、過去を共有していることもあるかもしれないね、という話から、じわじわ暖めていたネタではあるのですが、snさんが書いてくださったことで、ようやく形になりました。
 どうネタが転んでも、密(の前世)が「奥様」なのは変動が無かった、ということに気付いて、ちょっと笑えました(笑うなよ)。

 相変わらず、自PC大好き!
 という雰囲気前回なので、大丈夫な方だけ前にお進み下さい。
 あ。snさんとこのをお先にご覧くださいね。

――――――――
第3回プライベートリアクション
No.P×OXX26 担当:Sie
「福音のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の一部の方に送られています)

■プラリアを読む

――――――――
 それは。
 重ねてきた運命の、たったひとつに過ぎない――

 窓の外に広がる景色は、憎らしいくらい他人事めいて。
 しかし、彼女を暖かな気持ちにさせた。

 19世紀、ロンドン。
 何時ともなく、“今”として広がる世界。
 少なくとも、そこに住む『彼ら』は、彼女と共に消えていく運命に無い。
 その必要も義務も無い。自分とは違う苦しみが、そこに、世界に広がっているであろうことは、彼女――蜂蜜色の髪を外気に晒したまま遠くを見る婦人にも、容易に想像できた。
 しかし、それが自分の持っている苦しみと違う、ということは、少なからず、彼女を安堵させた。
 全ては他人事だ。
 あの人を。
 あの子を。
 置いて去らねばならないこの世界に、自分の苦しみを植えつけて行かなくても、良いのだ。
 この苦しみは、全部、自分が持っていく。

 ただ、婦人の胸を締め付けるのは――ただひとつの。
 娘のような、妹のような、少女のことで。

***
「奥様……。いけません、お体に障ります」

 歩み寄る、馴染んだ黒髪。
 そばかすを浮かべた頬。忠実な女中。その顔が暗く沈んでいることだけが、婦人の胸を締め付ける。だから、努めて明るく微笑みさえしたのだ。
「大丈夫」
 振り返り、微笑んで少女を見る。泣きそうな顔。
 気まぐれと偶然に満ちた自分の行動を、それでも恩だと、忠実に覚え守る、まるで番犬のような。頑なで忠実で、諦めに満ちた彼女の心を、微笑で――幸福感で満たすことが出来たら、どんなにか嬉しかっただろう。
 時代の流れには逆らえない。
 運命は『そう』動く。
 そんな思いが、婦人の胸にあった。それは諦め。巻き込んでしまった、という、苦い後悔。
 愛する人に出会う前に、彼女は人の妻になっていた。それは彼女の意思によるものではない。ただ、彼女が嫁ぐことによって、得をする人間が居ただけの話だ。その場所に、役割に、彼女は懸命に馴染もうとした。
 それが上手く行かなかったことも、その『場所』以外を愛してしまったことも、彼女の意思に因るものではない。ただ、彼女が『選び取った』結果だと――彼女だけが合点していた。

 たわいも無い会話。
 振り返る過去。
 もう戻れない時間。

 自分の時間は続かない。そう――彼女だけが合点していた。
 何度も繰り返した運命の中で、迎えた幾つもの「死」を思い出す。訳もわからず血を吐くような即効性のものよりも、じわじわと滲むように染み込む毒の方が苦しかった、と、そっと、胸の端っこで思い出す。それを口にする気は無かった。言えば少女を『苦しめる』。
 今自分を蝕む「毒」は、今までの中でも、とびきりに遅効性だ。
 思って。
 浮かびかけた自嘲を、飲み込んで微笑みに変えて、婦人は口を開く。

「気分がいいうちに、お薬を頂いておこうかしら。お湯の用意は?」
「は、……は。只今」
「ねえ」
「は?」
 ――この子の、声を聞けるのは。

「迷惑にならなければでいいのだけれど、教えて頂戴。……誰の、指図なのかしら?」
 
 あと、どれくらいの時間なのか。

***
 きゅっと、眉をひそめるあの人の顔を思い浮かべる。
 理不尽を怒る顔だ。
 あの人自身をも苦しめたであろう前世の思い出。あの人の手、左の甲には、酷く重いやけどがあった。かつてそこに紋章があって、思いつめた母親に焼かれたのだと言う。
 あの人自身も繰り返し傷をつけたというその場所から、あざ笑うように紋章は転移を遂げていた。
 あの、紋章。
 普段は衣服に隠れて見えないそれを、婦人は思い浮かべる。
 自分の、恐らく先の見えた余命を告げたときの、あのひとの顔。その指が、蜂蜜色した彼女の髪を絡め取った初めての日。例えようも無い愛しさで、彼女を締めつめるその苦さをもって。
 彼女は、自分の恋慕が片恋で無いことを知った。

 死を、目前に。

***
「そんな」
 途切れ途切れになった会話の向こうに、彼女が拾った仔犬の鳴き声が聞こえる。
 婦人は思う。
 ああ、けれど、お前は犬じゃないのよ。

「……裏切るのが、運命なんですか? 毒を飲むのが、運命だと言うんですか?
 ……そんなのが運命!? 生まれ変わっても、私達ずっと、裏切って、毒を飲んで、そんな事のために、私達」

 犬じゃない。道具でもない。
 あなたは人として生まれた。
 私に、いつくしむことを教えてくれた。ああ、そのお前を――独り遺して逝かねばならない――

 婦人の胸には、ただ悲しみがあった。
 けれど喜びがあった。それは出逢い。
 彼女を苦しめたのが運命ならば、独りではないと知らしめてくれたのも、また、運命であったのかも知れない。
 嬉しかった、と、婦人は言う。
「どうすれば、……お前は、」
 彼女の胸にはただ、愛する気持ちだけがあった。
「……もっと、……笑って……」

 少女の頬から流れ落ちた涙が、頬の柔らかさが、婦人の手に伝わった。ぬくもりも。けれど、それはだんだん遠くなっていく。――笑って。もし、運命が私達を翻弄し続けるものだとしても。どうか、どうか――
 婦人は願った。

 笑って欲しい。
 お日様のように微笑む少女は、きっときっと愛らしいに違いない。
 そう願うことは、彼女の苦しみを、“未来”への希望に変えた。

「でも、……はい、奥様、生まれ変わったら、その時は、……その時は、きっと。お言いつけの通りに」

 少女の声が届く。
 ふわりと。婦人の中から呪縛が消える。

(約束よ)

 奇跡のように、その唇が動いた。

「っ、はい! きっと、御許へ参ります。お許しを請いに、参上致します。きっと、きっと必ず」

 必死に答える少女の声が、福音のように響く。ああ。なんて幸福なのだろう。
 彼女はきっと微笑んでくれる。幸せな笑みを見せてくれる。

(約束よ)

 その最期は。
 彼女が、数え切れないほど繰り返した死の中でも。
 見つけ出すことが出来ないほど、穏やかなものだった。

 ――それは。

 重ねてきた運命の、たったひとつに過ぎない、けれど。
――――――――
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 というわけで、新年最初のPRを書き上げました。  休みけっこうあったのになー。 …
2007-01-09 Tue 23:07 ぼくぜん。
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